看護師を取り巻く問題の中には「准看護士制度」に関するものもあります。看護師には「正看護師」と「准看護師」があるのはよく知られていると思います。しかし、この違いはいったいどのようなものでしょうか?正看護師と准看護師の違いは、例えば一般企業の「正社員」と「契約社員」のような待遇の違いではありません。
まず、主な違いとして看護師は国家資格であり、准看護師は都道府県知事が認める知事免許だということがあります。
正看護師になるためには、主に高校を卒業後、看護専門学校または看護大学の課程を修了し、看護師国家試験に合格する必要があります。他に看護短期大学から国家資格を取るルートもありますが、学生のニーズも看護大学へ移行していることから今ではその数も減少傾向にあります。一方、准看護師になるにはまず、中学校を卒業後、准看護士養成所または高等学校の衛生看護科を卒業し、准看護師試験を受けなくてはなりません。これに合格すると、都道府県知事から准看護師免許が交付され、准看護師になることができます。
さてここで、年次別の准看護師の数を見てみましょう。
<全国の准看護師数>
平成15年 424,343人
平成18年 410,420人
平成21年 394,430人
平成24年 377,756人
(日本看護協会の資料より抜粋)
もともと、准看護師とは戦後の看護師不足を補うために儲けられた暫定的な資格でした。そのため、准看護師は「医師または歯科医師、看護師の指示の下に看護業務を行うこと」となっています。これは准看護師があくまで医師や看護師の助手的な立場であるということになります。従って、給与面でも正看護師には劣りますが、実際の業務に関しては両者の区別が曖昧で、やっている事自体は正看護師とはほとんど同じだという矛盾が生じています。さらに、昇給やキャリアアップを考えた場合でも準看護師はまず正看護師になる必要があり、遠回りになってしまいます。将来看護師を目指す学生の中には、正看護師と准看護師の違いをよく知らずに准看護師を選んでしまう事もあります。准看護師を選ぶことが悪いわけではありませんが、その将来性も考えておかなければなりません。
特に現代では医療がますます高度化し、看護師といえども高い医学知識が必要となってきています。その影響もあって、正看護師自体も高学歴化が進んでいます。以前は、ほとんどが看護専門学校を卒業し看護師になっていましたが、最近では看護大学を卒業して看護師になるケースが増えています。看護大学では一般的な看護技術だけでなく、様々な看護理論も学べる上、看護師のカリキュラムと並行して保健師や助産師の受験資格を取ることも可能です。さらに、看護師が認定看護師や専門看護師を目指す上でも看護系大学や大学院が注目されています。
このように、看護職全体の傾向として内容の高度化、高学歴化が進んでいる以上、あくまで補佐的な准看護師は数を減らしていて、准看護師の養成学校を閉鎖する自治体も出てきています。それでも求人には准看護士の募集もありますが、それはどちらかというとコスト的な節約を考えているというのが本音のようです。将来的には准看護師制度自体を廃止するという噂もあり、同じ看護の現場を支えるスタッフとしてそのあり方を考えるべきかもしれません。